Moonlight scenery

        The house of the confectionery.
 



 欧州と砂漠の境目に所在するR王国は、地中海の端っこの半島とその周辺の小さな島々から成る、言ってみれば“群島国家”であり。一年を通じて温暖で乾燥した気候ゆえ、多くの種にまたがって様々な作物を育てるのにはちと向かない土地ではあるものの、いにしえの昔から東西交易の拠点だった歴史も手伝って、国の中核をなす王家の人々は代々 外交活動へ積極的であったため。世界規模の大戦が起きた時も、世情をきっちりと把握し、決して逸った行動には出ず、嵐が収まるのをじっとじっと耐えて待ち。人々の心地が荒んでいた時代が何とか落ち着くと、今度は今度ですぐにも観光で打って出よう、そうすることで世界市場の流通に弾みをつけさせようと動き出した。あくまでも“生産的”なことにしか、手も口も、ついでに金も出さない。経済や情報という世界で秘やかに跳梁し、裏方国家としての影響力の大きさでは、どこの列強国でさえ一目置く、正に“奇跡の王国”。
「とはいっても、冬場はそれなりに寒くもなるんだけれどもね。」
 同じ半島の南欧仲間ながら、スイスと接しているがためアルプスでスキーが楽しめるイタリアの北部のように、雪まではそうそう降らないところは十分に温暖な冬ではあるけれど。長い上着に手ぶくろにと、一応の防寒具は必要になるし、何と言っても長雨が続く、ちょいと鬱陶しい日和が続く。夏場の乾季を補うためのものだから、ウチには水脈があるから要らないなんてな、罰当たりを言ってはいかんと判っちゃあいるが、それでもね。寒いところへの雨続き。これが気鬱を運ばない訳がなく。
「だから、春のお祭りを盛大にやるんだしvv
 それもまた、この国に限った話じゃあなく、カレンダーの年度始まりとはまた別の、春という芽吹きの季節を、欧州の人々はそれはそれは楽しみにしておいで。一番昼間が短い冬至を境に設けられたという、暦の上での“1月1日”の理屈も解るが、冥府に押し込められし乙女が大地の母のお膝下へと帰る“春”の到来の方こそが、そこはやっぱり待望の節季。R王国でも例に洩れず、そりゃあにぎやかなお祭りを、国を挙げて催すのが習い。新年のご挨拶だの何だのと、諸外国の大使や関係者への顔つなぎに、王家の主幹の方々が奔走しつつある忙しさの中。それでも王宮内部の話題は、早くもそちらの準備へと移りつつあって。
「ウチは何たって、そのままルフィのお誕生日へ移るから。」
「そうそうvv
 王宮のお陽様。太陽みたいに明るくて、温ったかい笑顔が国民に愛されている、いつだって元気で腕白な王子様。そんな彼の生まれた五月をクライマックスに、春の祭典はそりゃあにぎやかに執り行われるので、その準備もまた大掛かり、且つ、慎重綿密にあたることがお約束。

  「それでの、この企画書の量だってか?」

 翡翠宮の第1執務室へと運び込まれた、段ボール箱にいっぱいという書類の束に、通りすがりの護衛官殿が口元を真横へと引きつらせ、苦虫かみつぶしたような顔になる。王宮勤務とはいえ、体を張ってナンボという系統の彼には、こういった紙の山やデスクワークは相変わらずの鬼門であるらしく。だが、
「安心しな。お前さんがこれへと関わることになんのは、もうちょっと精査が進んでからだから。」
 やはり書類の束を抱えた金髪痩躯の隋臣長殿が、薄い口元を皮肉っぽく吊り上げて、ややこしい笑顔のご返杯。と言っても、
「中身へ意見する権限が有るか無いかって話じゃあなくて。まずはと処断する条項があるからねぇ。」
 これでも第一次審査を通過した分なのよね、メールやハガキで届いたプランまで合わせりゃどれほどの量だったものか、と。みかん色のショートカットもシャープな印象の才女、佑筆こと書記官様が細っこい肩をすくめて見せて、
「処断する条項?」
 そんな偉そうな権限があんのかという含みへと。

 「それは誰へのいちゃもんつけなのか、
  勿体ぶらねぇで くっきりはっきり言ってみな。」
 「何だとぉ? 誰がいつ勿体ぶったよ、こら。」
 「いよいよのこと、どっちが立場をわきまえてねぇのか、
  はっきり決着つけても良いんだぜ。ああ"?」

 …と、素敵眉毛の君がそりゃあ判りやすくも着火してくれたようなお言いようをしたゾロへ、

 「だ〜か〜ら。」

 二人の男衆の、いかにも角突き合わせておりますとにらみ合ってたお顔の前へ。バインダー型ファイルを差し入れての通せんぼをして差し上げてから、
「皇室だからこその我儘や偉そうを、ここぞと主張しなきゃあならないの。」
「?? 何だそりゃ?」
 ますます判らんと眉を寄せた元“砂漠の大剣豪”さんへ、手にしたファイルを振って見せるナミさんが言うことにゃ、
「何度もくどいようだけど、春の祭典ってのは、観光業が外貨獲得の主柱なウチの国にとっては、そりゃあ大事な一大イベントでもあってね。」
 王子の誕生日にまつわる式典の方は、当然のことながら“国事”なので、実行委員会が編成されての王宮主催、皇室庁運営となるのだが、それへとなだれ込む、言わばプレリュード扱いの春の祭典の方は、観光客へのおもてなしも兼ねた、言わば“官民一体”のお祭りなので。ご出資いただく企業や団体、一般の方々からのご意見へもそこそこ耳を傾けて取り入れなくてはならない場合が出てくる。そこで、あまりに弾けた…もとえ、飛び抜けたそれへの規制や主導権は政府にあるとし、なればこその“審査”とでもいうものか。様々な企業や有志の団体などなどから、参加の意向と共に寄せられるとりどりの企画や発案の数々を、冷静に公正に ふるいにかけねばならなくて。
「祭典にちなんで特別に誂えた記念品の販売や展示、祭典にまつわるコンクールやコンペティションってのが大半ではあるけれど、中には海外資本の提供を受けてのこと、そっちの本社PRのカラーが強い催しもなくはないから、景品や主催者には重々気をつけないとね。」
 基本的にはリベラルなお国なので、誰が何を宣伝しようとお構いなしとばかり、あんまり規制はしないのだけれど。外国資本の食い物になる気はさらさらないので、我が国の祭事に相応しくないとの理由にて弾くのが、皇室サイドが特にチェックすることを求められている点だったりもするのだそうで。…国粋主義とか叩かれませんか?
「他の部署が言い出すと、そっちを憂いたり危ぶむふりをした連中に付け込まれもするんだろうが。」
「そうそう。その点、王宮が“我々の国風に相応しくない”と判断するのは、さほどトゲもないでしょう?」
 何たって此処ほど 国の“らしさ”を象徴しているところはないのだし、そこの主張であるならば、ウチは王政国家なものですからと、政府機関の窓口でも言い訳は立つ。
「…成程。」
 と言う訳で、華やかな祭典の演目やら企画やらへ、さりとてシビアな処断を下さにゃならない、それは真面目なお仕事へと着手する時期に入った、皇室の執務官の皆様方だったりもするのであり。やっとのこと、何でまたそんな大きな行事へ第二王子様付きの執務官の意見を請われているのかという、どこか寄り道みたいな段取りへ、護衛官殿の納得がいったところで。
「そういう訳だから、ルフィのお守りはよろしくね。」
 うふふんvvと やたら楽しそうにわざわざ口にしたナミさんが、いつも以上に二人っきりよvvなんて言いたげなのが珍しくも伝わったのか、
「…っ、判ぁってる。/////////
 おおう、一瞬怯んだぞ、珍っずらしい〜〜〜vv(ひゅーひゅーvv) 大人たちが、せめてもの逃避か軽口を叩き合っていると、

  「…なあなあ、まだ終わんねぇの?」

 そんな執務室の窓辺へ寄り来ていたのは、ヒタキ鳥ならぬ黒髪の王子様。ちょうど中庭へと向いた両開きの窓の桟へ、両腕を敷いた上へ顎を乗っけてという体勢でおり、
「…いつからそこに。」
「ん〜? ゾロとサンジが、ちゅーしそうなくらい顔を寄せ合ってたところから。」
 どうなることやらってドキドキしたぞvvだなんて、それは恐ろしいことをあっけらかんと言っちゃうところが、
「ウチの王子様の醍醐味だよなぁ。」
「…まあな。」
 判って言ってるなら相当練れて来たかものルフィ王子。これでも先の春に20歳になりました。この国の成人は、帯刀式を受けたらなので。もっと前にとうに“成人”扱いされる年齢になってはいた王子だが、だってのに、外交の場ではまだ十分に“坊や”で通ってる節もあり。
“お立場が、じゃあありませんよ?”
 判っておりますとも、隋臣長殿。ツッコミもすかさずですな、さすがは“王子フリーク”筆頭。
(苦笑) 冗談はともかくとして。一応は成人なので(まだ言うか)、その発言への重さや責務は増したものの。あどけない笑顔や屈託のない言動は、依然として多大な効果を発揮してもおり。我を通すような物言いをしても、すぐさま反感を買うことは少なくて。相変わらずに微笑ましいこと…という、やわらかな受け取られ方をしている、結構お得な王子様だったりし。

  「春の祭典って、三月の末からの行事なんだろ?」

 まだ年が明けたばっかじゃんかと、皆して忙しそうなのが不満なのか、頬を膨らませ気味にぶうたれるルフィであり。その視線の方向にいち早く気がついて、
「ああ、すまんな。ゾロはまだ手が空いてるから返す。」
 傍らのデカブツの無駄に広い背中を、ポンポンと叩いて見せるサンジだったりする。途端に“やたっvv”と嬉しそうなお顔になる、現金なルフィだってのも織り込み済みで。だからこそ、
「あのな…。」
「なんだ。」
 お前の主張とか人権なんてもんは認めてやんねと、不満そうなゾロへ意地の悪い澄まし顔になるサンジさんだってこと、一から十までお見通しのナミさんが“やれやれ”なんて肩をすくめるのもまた、いつもの呼吸だったりするのだが。

  「………あ。」

 そんな彼女の手元から、ヒラリと飛んだ一枚の書類。他の束とは別扱いになっていた、第一次審査の場で推薦のかかった企画の内の一枚であるらしく。
「あやや。」
 よほどのこと具合のいい“風の通り道”になってでもいたものか。窓辺の王子様の顔間際まで、羽根のような軽やかさにてなめらかにも飛んでゆき、はっしとばかりの真剣白刃取りにて捕まえた企画書には、

  「…お菓子の家?」

 どこかメルヘンチックな色調で、石積みの家を模したイメージ画が添えられた、有名製菓店の出したプランが記されており。
「ああ、それね。どこの審査の場でもいち押しだったらしくてね。」
 まだまだ無邪気な王子様は、やっぱり相変わらずにスィーツがお好きvv だから…という順番でもないのだけれど、ケーキやお菓子には観光客からも定評のある国のらしさを表すためにも、こんな企画はいかがでしょうかと出されたものであるらしく、
「この製菓店は大通りに幾つもチェーン店があるので、それらの店頭へこの“お菓子の家”を堂々とディスプレイする予定なんですってよ?」
 その展示を“祭典協賛”とするお墨付きをいただきたいというのが申請の主旨であり、予算や補助がほしいというものでもなし、そのくらいは構わないのではないかということで、余裕で審査を通過したらしい。
「ほら、ルフィも好きだって言ってたでしょう? ここのロールケーキ。」
 ナミが思い出してごらんと言葉を足して、
「ウチの親戚筋の叔父貴がサジキタス通りの支店長で。献上品として持って来たの、覚えてねぇか?」
 こちらさんはその実家からして王室賄い方の家柄のサンジが、自分の親戚だってだけじゃあなく、一緒にご相伴にあずかって食べたからこそのご意見として、腕や味には間違いはねぇよと太鼓判を押したが。

  「………これは没だな。」

 え?と。サンジやナミが聞き返したのとほぼ同時。何を思ったか、いきなり書類に手をかけたルフィが、
「あ…っ。」
「こらっ!」
 止める間もあらばこそ、そりゃあ潔く上から下へと真っ二つに破いてしまい、
「正式な書類へ、なんてこと…。」
「るふぃ〜〜〜っ。」
 こればっかりはやっちゃあいけないお悪戯
イタだぞと、眉を寄せたナミが噛みつくより先に、

  「ダメったらダメなんだかんな。
   エースや父ちゃんが許しても、議会で通っても俺が絶対反対だ。
   王宮が認めた出し物にはさせねぇっ! いいかっ!」

 叱られるっと咄嗟に身をすくませるどころか、相手の威勢ごと弾き飛ばすほどもの珍しい大声で。はっきりくっきり言い放ったルフィの迫力には、さしもの女傑も驚いたらしく、
「う…っ。」
 何か言いかけてた声を思わず喉奥に凍らせてしまったほど。そんなナミの表情にこそ怯んだか、
「…っ。」
 いつになく不機嫌そうな顔になったままながら、だが、ルフィの側もいたたまれなくなったのだろう。そこから踵を返すと、一目散という勢いで庭の方へと駆け出してった彼であり。
“…しようのない王子様だねぇ。”
 内心でそんな風に呟くと、
「ルフィっ!」
 これはもはやその身に染まされた刷り込みか、反射的に後を追いかかった隋臣長殿の肩へ、ゾロが素早くその武骨な手を置いた。何だっと振り返って来た険しいお顔へ、
「あんたは、重要書類をこんなにしたってことを叱るのがお仕事だろ?」
 にんまり笑って引き留めて。その代わりのように、窓の桟へと足をかけ、軽々飛び越えて後を追う。まま、確かにコトの順序はそうかもしれないが、

  「………あんのヤロ、美味しいトコだけ持ってきやがって。」

 いかにもお怒りの滲んだ、妙に低いお声を出したサンジだったのへ、
“お〜い…。”
 ナミさんが“こらこら”と、事態の重きを擦り替えてるんじゃありませんと呆れたのは、言うまでもなかったりするのであった。






 一体何でまた、ああまで急な癇癪を起こしたルフィなのか。まさかまさか、ケーキに襲い掛かられる初夢でも見たものか。それとももしや、国中のケーキを独占したい王子様であったのか。
“…まさかに、ダイエットしたいからなんてな理由でもあるまいしな。”
 どういう燃費なのか、あんなに食べてもあんなに痩せっぽっちな王子様がですか?
(笑) 第一、そんな超個人的な道義で国事への手心を加えてどうするか。ばたばたばた…とけたたましい駆け方をするため、あんまり足が速い方ではないルフィの後を追うのは、ゾロにとってはさして難儀ではなく。さして時間も掛からぬうち、少し厚手のデザインシャツに、浅い朽葉色の目の詰んだカシミヤのベストとパンツというアンサンブルを重ね着た、まだまだ学生の、しかも少年と呼んで十分通用しそうな小さめの背中を、木立の向こうに見いだして。
「…。」
 声をかけると却って逃げるかと判断し、そのまま足を速めて、あっと言う間に追いすがる。
「…っ。」
 一旦追い抜いて進行方向へと回り込むほどの手際のよさは、日頃の鬼ごっこで培ったもの。それが判っているから、ルフィの方でもそれ以上の悪あがきはしないまま、ようやっと足を止めるとその場へと立ち尽くしてしまったものの。
「………。」
 どんなレベルのそれかは、漠然とでしか判ってないが、王宮の執務官へと正式に上がって来た書類を、説明もないまま破棄してしまうなんて。それが王政国家の王子様であれ、とんでもない暴挙には違いない。叱られると自分でも判っているのだろう。所謂“逆ギレ”とやらでの更なる癇癪を起こしそうな気配もないままであり、

  “正直者、なんだよなぁ。”

 悪戯なんかじゃあないし、気分に任せた癇癪なんかでもない。ルフィなりの何か、それって通しちゃいけないと、それも痛烈に思ったからこその行動だったに違いなく。ただ、上手に言って伝える自信がなかったか、あるいは、そんな言い分はお子様の我儘だと言われそうな気がしたようなことだったか。

  「…なあ。何が気に入らなかったんだ?」

 大きな手のひらが、真ん丸な頭へぽふりと乗っかる。畏れ多くも王子様の頭だが、大好きな護衛官殿だからと、咎めなしとされている行為であり。そこまでの仰々しい添え書きさえ不要な証しで、
「だってよぉ…。」
 その大きな手の温もりへ、ルフィの方から“すりすり”とおでこを擦り付けてくる。
「そりゃあサ、ウチの国は父ちゃんとか大人たちが頑張ってっから、極端に貧しい家はないって状態を守っているけど。それでも、ケーキなんて贅沢だから記念日にしか食べられないって子供は結構いるんだ。」
 ルフィは形式張った視察のみならず、私服に裸足というよな恰好で、時々王宮から脱走しては、そこいらの辻々で遊んでいたりもする。構えの大きな店の人間だとか、土地の名士辺りにはバレバレの“お忍び”だが、これが案外と、普通一般家庭の人間にはバレないものだから、肩を張らない彼らの現状、ちゃんと知ってるルフィでもあって、
「なのにサ、お菓子で飾りもんの家を作るだって? 高級ホテルの余興とかならともかくも、祭典への出展ってことにして町角に飾って、可愛いでしょう、綺麗でしょう? そんなん冗談じゃねぇって思ったんだ。」
 好き嫌いをしたら、作った人がどれほどしょんぼりするかと、そういう順番で躾けられてる王子様。だからこそ、過ぎる贅沢や華美は大嫌い。巧みな細工や工芸品、それに携わる人たちの素晴らしい技術や伝統を残すためというなら、高価なそれらを保護するって理屈もまま理解できるけど。
「………。」
 美味しそうだね、って、指を咥えて見てるしかない子供だっているんだ馬鹿野郎と、そうと思ってむっと来たルフィだったらしくって。
「そっか。」
 それをまた、上手に言えない、憤怒が先に立って口が回らなかった自分へも、相当に悔しかったらしくって。俯いたまんま、ぐうにした拳で目元を拭う小さな王子様へ。なんだかほんわりと胸の裡が温かくなったゾロであり、
“グル眉の言いようじゃあないが。”
 これだから。この子の侍従であることが誇りだとつくづく思う。

  ――― じゃあ、観に来た子供にはケーキを振る舞うってのはどうだ?
       そんなん“ほどこし”じゃねぇかよ。
       そうなるのかなぁ。
       日頃は金取って売ってる奴がやるんだ、ほどこしと一緒だっ。

 ケーキ屋さんに恨みはないが、でも、そういう順番じゃんかと。拗ねた勢いもあってのこと、口調が厳しくなってるルフィであり、


  ――― さて、それじゃあどうしようかねぇ…?







            ◇



 さて。翌日にはもう、ルフィの思いの丈はそれとなく父王君のお耳へも届いていた。この王宮で、陛下への隠しごとが出来るのは、せいぜいエース殿下くらいのものというのがデフォルトになっている恐ろしさで、まま、それはともかく。

  『何と素晴らしい心根を育んでくれたことよ。父は嬉しいぞ。』

 それでなくたってルフィ贔屓の父上が、こんな良いお話を知って黙って引き下がるはずがない。さっそくにも発案の店へ極秘の使者を立てて、この企画、王家が丸ごと貰い受けたと宣言させ、それからそれから。サンジの実家の惣領であるゼフ翁に連絡を取り、

  『国中の辻々にこの仕様に負けぬ菓子の家を作って並べ、
   国中の子供らに、一人も余さずケーキを配れるか?』

 そんな挑発を差し向けたものだから。

  「ウチのジジィが挑戦受けて引くかってんだよな。」

 あくまでも国王の独善…というか、親ばか我儘発言ということで丸く収めたいシャンクス陛下だと判っていればこそ。受けてたってやろうじゃあありませぬかと、こちらも侠気で応じたゼフ翁だったとか。そんな風に、お互いの腹の底まで、実は重々判っていての大人同士の駆け引きの、何とも可愛らしいことと言ったらと、楽しそうな苦笑を見せたサンジやナミが窓辺から見やったその先では、

  「良い機会だから甘いもんは控えるってところまでは いかんかったらしいな。」
  「え〜? なんで〜?」

 なんて偉い子なんだというご褒美に、シャンクス陛下からお届けされた、セダンタイプ車のタイヤくらいはありそうな“超大型 旬の苺のショートケーキ”を。既に半分はいただいていた王子様が、テラスにて はしゃいでおられたりするのだからして………ああやはり、なんて平和な王国なんだか。こんな呑気なお国のお話ですが、今後ともどうかご贔屓にvv





  〜Fine〜  07.1.11.〜1.15.


 *カウンター 229,000hit リクエスト
   ひゃっくり様 『Moonlight scenery設定で、
             王子様も大人になったなぁと
                 側近の方々が感心しちゃうエピソード』

 *タイトルは“ダイワ○ウス”でもよかったでしょうか。
(苦笑)
  それはともかく。
  大人と聞いて…ちょっとだけえっちぃなことが頭をよぎったなんてのは
  ここだけの話です。
(笑)
  側近の方々が感心しちゃうようなって、そんな大人になっちゃうのか、ルフィ。
  早いもんだねぇ。(でも、もう20歳って設定だしな・笑)

ご感想は こちらへvv**

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